映画が公開されてすぐにCATS字幕版を見てきました。
とにかく映画館という空間において、大音量でCATSの音楽が聴けることは確かなのだから・・・それだけでも単純に嬉しいと思って出かけました。
予告編を見て、こういう雰囲気なのだな・・・と、ある程度の「覚悟ができていたので、そこまで驚いたり、がっかりしたりしなかったのですが・・・
私のようにコアなミュージカルファンで、歌詞も頭に入っており、「大画面、大音量」だけを求めて行ったならともかく、舞台のCATSを観たことがない方がこの映画だけを見てCATSのイメージを固めてほしくないなという気持ちでレポいたします。


CATSがこれほどロングランされているのは、音楽が非常に素晴らしいということ。
そして劇団四季CATSが日本でロングランに成功したのは、浅利慶太氏の訳詩が極めてうまいという証拠だとも思います。
(映画吹き替え版の歌詞は四季版とは異なります)

四季の舞台の猫たちは凛として誇り高く、キレッキレのダンスを踊りますが、映画版は耳がピクピク、シッポがうねうね動き、動きも何だか艶めかしくて・・・そこに違和感。

これより後は、猫について箇条書きで感想を書きます。
ミュージカルの舞台と映画版のCATS、まずは自分の目で違いを確かめたい!という方は、これより先はお読みにならないでくださいね。



~違和感が強かった猫~
・ジェニエニドッツ
動かなくて太ったおばさん猫。
太ももをボリボリ掻くのは、ちょっとやめてほしかったかな。
ゴキブリたちとのタップを期待したのですが、ゴキブリがCGで小さくなってウニョウニョたくさん。
ここはリアルにするといけないところでは?やはり舞台の爽快なタップダンスが見たくなります。

・バストファージョーンズ
お金持ちでご馳走をたらふく食べて高級クラブに行く貴族猫。
品があって、気取っているところが魅力なのに、ゴミを漁って、水を飲む姿が醜くて、かなりガッカリ。

・ミストフェリーズ
私の大好きなマジック猫。劇場で、くるくるバトンを回しながら降りてくるとワクワクします。
映画では自信がなくて、オドオド。しかもほとんど踊らないなんて。
舞台を未見の方は是非劇場で、ミストの優雅な連続ターンを堪能していただきたい!
貴重な動画を見つけました。劇団四季、加藤敬ニさんのミストフェリーズです。



~良かったと思う猫~
・ヴィクトリア
真っ白な可愛い猫。この映画はヴィクトリアを中心に描かれています。
演じるのは英国ロイヤルバレエ団のプリンシパルダンサー。映画への出演は初めてとのこと。
新曲あり。歌声も綺麗なソプラノでした。

・ガス
劇場猫。なんとイアン・マッケラン氏
大好きなロード・オブ・ザ・リングのガンダルフ様~
さすがの演技力で、昔の栄光を懐かしむお姿にジーンとなりました。
見せ所であるグロールタイガーの劇中劇がほとんどなかったのは残念。

・スキンブルシャンクス
鉄道猫。仕事に忠誠を誓う真面目な猫・・・ではなく、タップ猫!?
集めたゴミが汽車になり、汽笛をシュポ~というのもなかったけれど・・・。
ジェニエニドッツのタップシーンが不完全燃焼だった分、思い切りタップをしてくれました(笑)
外に出て線路をタップするのは、気分がスカッとして面白かった!

・グリザベラ
言わずと知れた娼婦猫。
実は私、メモリーの歌を聴いても涙腺が緩むことが滅多になかったのです。
有名すぎて、いろいろな場面で聴きすぎているからかもしれません。
ジェニファー・ハドソンの歌を聴き、そんな私が・・・(T_T)
素晴らしかった。メモリーを聴けただけでも劇場へ来て良かった!

・オールドデュトロノミー
ベテラン女優さん。女性のデュト様。慈愛に満ちた眼差し、たたずまいは申し分なし。
ただ・・・やはり最後の曲は、バリトン歌手が朗々と歌い上げてほしいと思いました。


CATSはT.S.エリオットの詩ですが、とても「哲学的」。
私はCATSの凛とした誇り高さ、永遠の命に続くような神々しさがとても好きです。

映画版ではそういった気品や誇りより、リアルなゴミや艶めかしい動きが強調されていたのが残念でした。
作品本来の精神をリスペクトしているようには、あまり感じられませんでした。

これがCATSだと思ってしまわずに、是非たくさんの方に劇場にも足を運んでいただきたいなと思います。


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