今回のトゥーランドットで辛口の感想を書いてしまいました。
豪華な作品なのに、どうして私は感動できなかったのか、あれからずっと考えています。

大学の時、ドイツのオペラの演出哲学についての授業があったのですが、
舞台で拍手を浴びるのは、役者ではなく原作者の精神だ・・・と繰り返し聞きました。

私もこの考え方に賛成です。

まずは「原作、そして脚本ありき」だと思うのです。

伝えたいことがあり、自分の美声を聴かせるのが目的でなく、原作者の僕(しもべ)のような気持ちで
メッセージを伝えたくて演じたときに、観客は本当に感動すると思います。
そして、そのように演じた役者さんに心からの拍手を送ります。

でも今回のトゥーランドットのプログラムを読んでみると、脚本家は一番遅れて企画に参加した
・・・と書いてありました。

オペラにはない登場人物も、キャスティングまでもが既に決められており、
参加された時は「なんだ、出来てんじゃん。」と率直に思われたと書いてあります。

今回の脚本家の方は、パズルを組み立てるように、与えられた材料をアレンジするのが仕事だったそうですが、
こういう流れだったから、違和感を感じたのではないかと思いました。

登場人物を増やすことにより、オペラとは話を変えてしまったので、結局、原作者の伝えたいことというのが
曖昧になってしまった気がします。

私はミュージカルが大好きですし、日本のオリジナルものを心から応援しています。
才能あって作品を制作、企画する方は、それだけで選ばれた方です。
自分たちの手で作品が作れるなんて、苦しみも大きいでしょうが、とても羨ましい仕事です。

伝えたいことが存在しない場合、舞台装置の凄さや衣装の美しさには目を奪われても、
心に迫るものが少なくなる気がします。

多額のお金を使って多くの方の協力を得て作品を作り上げ、観客も高いチケット代を払って観に行くのですから、
国民の代表として頑張ってもらいたいな・・・と心から思います。

ナマイキなことを書かせていただきましたが、ミュージカルを心から愛する観客の一人の呟きとして
お許しください。